T-6 (航空機・2代)

T-6 テキサンII

アメリカ空軍のT-6A テキサンII

アメリカ空軍のT-6A テキサンII

  • 生産数:1000機以上で更新中
  • 運用状況:現役
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T-6 テキサンII: T-6 Texan II)は、1990年代初頭に運用が開始されたアメリカ合衆国製の練習機である。この航空機の愛称は練習機などの用途で成功を収めたT-6 テキサンに因んでいるが、初代テキサンとテキサンIIは用途が共通するのみであり、製造メーカーや諸元といった点に相互の関連は無い。

開発

1990年代初頭、アメリカ空軍アメリカ海軍統合基本航空機訓練システム計画(JPATS計画)を発表した。これは、老朽化したT-37BとT-34Cを1種類の練習機で代替することで、部品や整備、操縦の互換性を高め、コストを大幅に削減できると共に、航空機製造メーカーにとっては数百機の大型受注を得ることができるまたとない機会であった。この計画の応募機は既存の機種もしくはその発展型と規定され、アメリカ国内の企業が世界各地の航空機メーカーと提携して応募した。この内レイセオンビーチ社は、スイスピラタス社が開発したターボプロップ練習機PC-9をJPATS計画向けに改造した機体PC-9 Mk.IIを提出した。

1995年6月22日、PC-9 Mk.IIは共同初等練習機に採用され、1930年代から1960年代にかけて使用されたノースアメリカン社製のレシプロ高等練習機のT-6 テキサンに因んでT-6 テキサンIIと命名されると共に、141機の第一次発注が行われた。量産機の配備は1999年から開始されている。

アメリカでは、空軍で372機、海軍で339機を装備する予定。タンデム複座配置であり教官のフォローが難しく、原型となったPC-9と同様に性能も高すぎるため初心者が容易に扱える機体ではない。米軍は、より小型のT-53Aなどを飛行適性検査や前段階の初等訓練に併用している。

設計

外見こそ原型となったPC-9とほぼ同一であるが、米軍の要求に合わせるため約90%の設計変更が加えられている[1]

エンジンは、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ製のPT6A-68(最大出力1,274kWを820kWに減格)に換装されて出力増強による性能向上が行われ、スロットルレバーに対する反応も滑らかになるように考慮された。機体には内部の与圧化に伴う胴体の強化、方向舵および昇降舵の空力変更、降着装置の強化、燃料容量の増加などの改良が施された。特に大きく変更されたのがコックピットで、バードストライク対策のための風防強化、ゼロ・ゼロ射出座席の搭載、計器類の近代化が行われた[1]。これらの改良により、風防前部にフレームが、後部胴体下部にフィンが追加されている点がPC-9との外見上の大きな違いとなっている。

AT-6のデモンストレーター機

この基本型T-6Aに対し、アメリカ海軍向けの改良型T-6Bではコックピットのグラスコックピット化が行われ、HUDHOTAS概念も導入されたほか、主翼下に片側3箇所のハードポイントが設けられている。T-6Bを元に軽攻撃機型としたのがAT-6 ウルヴァリン(Wolverine)で、エンジンはそのままながら最大出力がエンジンの定格に近い1,193kWにまで引き上げられ、1,415kgのペイロードを持つ。軍規格1760兵器インターフェースを装備したことにより、JDAMペイブウェイといった誘導爆弾や、AIM-9 サイドワインダー空対空ミサイルも搭載できる。他にも、コックピットには防弾措置が取られ、ミサイル警報装置チャフ・フレアディスペンサーを搭載する[2]。このAT-6は、アメリカ空軍アフガニスタンへ供与する軽攻撃機となる軽航空支援(LAS)計画にも応募したが、A-29 スーパーツカノに敗れた。アメリカ空軍の軽攻撃機計画OA-XにもA-29と並んで候補となっていたが、この計画は2018年12月に無期限延期となっている。その後、2021年に航空戦闘軍団の戦術開発や標準化のために2機のAT-6が発注された[3]

海外の採用国

原型のPC-9とは別に、国外への売り込みも行われている。

派生型

米海軍のT-6B
空軍のT-6Aと異なり赤系統の塗装が施されている
T-6Bのフライトシミュレータ
T-6A
基本型。
T-6A NTA
ギリシャ向けのT-6A。ハードポイントが追加されている。
CT-156 ハーヴァードII
カナダ向けのT-6A。内装が若干異なる。
T-6B
グラスコックピットを導入したアメリカ海軍向け。ハードポイントが追加されている。
AT-6 ウルヴァリン
T-6Bをベースにした軽攻撃機型。
AT-6B
2017~18年頃に米空軍がトライアルを行っていたが、2018年12月に調達計画の無期限延期が決まった。
AT-6E
米空軍の軽攻撃実験計画(Light Attack Experiment計画、LAE計画)に伴い開発された軽攻撃機の実証実験機。2021年に7,020万ドルで2機が調達され[3][10]A-29との比較試験が行われている[11]
T-6C
T-6Bの輸出型。空対空・空対地射撃のシミュレーションが可能。
軽武装を可能とし兵器訓練にも対応したT-6C+もある。

スペック

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 分冊百科「週刊 ワールド・エアクラフト」No.128 2002年 デアゴスティーニ
  2. ^ 青木 謙知編 『Jwings戦闘機年鑑 2011-2012』 2011年 イカロス出版
  3. ^ a b Greg "CACTUS" DAVIS「米空軍からも少数発注を受けたAT-6Eウルバリンの砂漠地帯試験」『航空ファン』通巻812号(2020年8月号)文林堂 P.32-35
  4. ^ 1000機の大台突破! 米国製T-6「テキサンII」練習機 導入は14か国に拡大
  5. ^ イギリスのパイロット訓練、ツカノからハーバードIIに
  6. ^ Texan T1 | Royal Air Force
  7. ^ The Penny Drops: Iraq Chooses its Training & COIN Aircraft
  8. ^ 「航空最新ニュース・海外軍事航空 チュニジアに軽攻撃機型テキサンAT-6を輸出」『航空ファン』通巻809号(2020年5月号)文林堂 P.115
  9. ^ “タイ空軍、密輸 ・麻薬など国境警備任務にAT-6ウルヴァリン契約”. flyteam (2021年11月16日). 2021年11月21日閲覧。
  10. ^ “アメリカ空軍 新型のAT-6E「ウルヴァリン」攻撃機をテキストロンから調達”. 乗りものニュース. (2021年2月22日). https://trafficnews.jp/post/104768 2021年6月20日閲覧。 
  11. ^ 井上孝司「航空最新ニュース・海外フォトトピック」『航空ファン』通巻821号(2021年5月号)文林堂 P.112

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