書斎の聖ヒエロニムス

曖昧さ回避 この項目では、カラヴァッジョの作品について説明しています。デューラーの1521年の作品については「書斎の聖ヒエロニムス (デューラー、1521年)」をご覧ください。
『書斎の聖ヒエロニムス』
イタリア語: San Girolamo scrivente
英語: Saint Jerome Writing
作者カラヴァッジョ
製作年1605–06年ごろ
寸法112 cm × 157 cm (44 in × 62 in)
所蔵ボルゲーゼ美術館

書斎の聖ヒエロニムス』(しょさいのせいヒエロニムス、伊: San Girolamo scrivente)は、イタリアバロック期の巨匠、カラヴァッジョがによる油彩画であり、一般に1605-1606年ごろに制作されたと見られている。作品はローマボルゲーゼ美術館に所蔵されている。

構成

本作は、ローマ・カトリック教会博士であり、絵画の好まれた主題である聖ヒエロニムスを描いている。この主題はカラヴァッジョにも好まれたもので、他にも瞑想して、書き物をしている聖ヒエロニムスの絵画を制作している。この作品で、聖ヒエロニムスは羽ペンを持っている、伸ばした腕を休めて、熱心に書物を読みふけっている。ウルガタラテン語訳聖書)を翻訳中の聖ヒエロニムスを描いていることが示唆されている[1]

歴史

デニス・マホンは作品の制作年として1602年から1604年を示唆しているが、一般には1605年から1606年までの制作とされ、主に17世紀の美術史の伝記作家、ジャン・ピエトロ・ベッローリの言明に基づいている[2][3][4]。ベッローリによれば、カラヴァッジョは1605年に枢機卿になったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の要請で作品を制作したが[5] 、枢機卿がもっと後に作品を取得した可能性もある。というのは、ボルゲーゼ家のカラヴァッジョ・コレクションについて説明しているシピオーネ・フランクッチの1613年の詩には言及されていないからである[2]。制作年が正確であるかどうかにかかわらず、この作品はカラヴァッジョのローマ時代後期[6] に描かれたものであり、画家のローマ時代は1606年に画家がマルタに亡命したことで終わった[7]

1700年から1893年までのボルゲーゼ・コレクションの目録ではホセ・デ・リベラに帰属されていたため、『書斎の聖ヒエロニムス』がカラヴァッジョの作品であるということは疑問視されることがある[8]

脚注

  1. ^ Bussagli, Marco (April 2009). Italian Art. Giunti Editore Firenze Italy. p. 346. ISBN 978-88-09-03726-7. https://books.google.com/books?id=80DpE2Y-xlAC&pg=PA346 2010年6月28日閲覧。 
  2. ^ a b Gilbert, Creighton (1995). Caravaggio and His Two Cardinals. Penn State Press. pp. 107–. ISBN 978-0-271-01312-1. https://books.google.com/books?id=7WSH4BabKuUC&pg=PA107 2010年6月28日閲覧。 
  3. ^ Hibbard, Howard (5 March 1985). Caravaggio. Westview Press. p. 320. ISBN 978-0-06-430128-2. https://books.google.com/books?id=wAvz9G4DhdkC&pg=PA320 2010年6月28日閲覧。 
  4. ^ Moreno, Paolo; Chiara Stefani (2000). The Borghese Gallery. Touring Editore. p. 192. ISBN 978-88-365-1946-0. https://books.google.com/books?id=Ce2Fg7FIvFgC&pg=PA192 2010年6月28日閲覧。 
  5. ^ Bellori, Giovanni Pietro Hellmut Wohl訳 (2005). The lives of the modern painters, sculptors and architects. Cambridge University Press. p. 188. ISBN 978-0-521-78187-9. https://books.google.com/books?id=Lm9gs8mXwOUC&pg=PA188 2010年6月28日閲覧。 
  6. ^ Pomella, Andrea (2005). Caravaggio: An Artist through Images. ATS Italia Editrice. p. 105. ISBN 978-88-88536-62-0. https://books.google.com/books?id=JDH4lOa8qRgC&pg=PA105 2010年6月28日閲覧。 
  7. ^ Hibbard (1985), p. 206.
  8. ^ Hibbard, Howard (5 March 1985). Caravaggio. Westview Press. p. 320. ISBN 978-0-06-430128-2. https://books.google.com/books?id=wAvz9G4DhdkC&pg=PA320 2010年6月28日閲覧。 Hibbard, Howard (5 March 1985). Caravaggio. Westview Press. p. 320. ISBN 978-0-06-430128-2. Retrieved 28 June 2010.
1600年以前の作品
  • 病めるバッカス』(1593年頃)
  • 果物籠を持つ少年』(1593年頃)
  • トランプ詐欺師』(1594年頃)
  • 『悔悛するマグダラのマリア』(1594年–1595年頃)
  • 『奏楽者たち』(1595年頃)
  • トカゲに噛まれた少年』(1594年–1596年頃)
  • 『バッカス』(1596年頃)
  • ユピテル、ネプトゥヌスとプルート』(1597年頃)
  • 『メドゥーサの首』(1597年-1598年頃)
  • 『アレクサンドリアの聖カタリナ』(1598年頃)
  • 『マルタとマグダラのマリア』(1598年頃)
  • 『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』(1598年-1599年頃)
  • 『ダヴィデとゴリアテ』(1599年頃)
1600年-1606年の作品
  • 聖マタイの召命』(1599年-1600年)
  • 『エマオの晩餐(ロンドン)』(1601年)
  • 愛の勝利』(1601年–1602年)
  • 『聖トマスの不信』(1601年–1602年)
  • 『キリストの捕縛』(1602年頃)
  • 『祈る聖フランチェスコ』(1602年-1604年頃)
  • 『キリストの埋葬』(1603年–1604年)
  • 『聖母の死』(1604年-1606年頃)
  • 『ロレートの聖母』(1604年-1606年頃)
  • 『聖アンナと聖母子』(1605年–1606年)
  • 『書斎の聖ヒエロニムス』(1605年–1606年頃)
  • 『エマオの晩餐(ミラノ)』(1606年)
  • 『キリストの荊冠』(1604年あるいは1607年)
1607年以降の作品
  • 『ロザリオの聖母』(1606年–1607年頃)
  • 『キリストの鞭打ち』(1607年)
  • 『慈悲の七つの行い』(1607年)
  • 『聖アンデレの磔刑』(1607年)
  • アロフ・ド・ヴィニャクールと小姓の肖像』(1607年–1608年)
  • 『洗礼者聖ヨハネの斬首』(1608年)
  • 『眠るアモール』(1608年)
  • 『ラザロの復活』(1609年頃)