ワイブル分布

ワイブル分布(ワイブルぶんぷ、: Weibull distribution)は、物体の強度を統計的に記述するためにワロッディ・ワイブル (Waloddi Weibull) によって提案された確率分布。時間に対する劣化現象や寿命を統計的に記述するためにも利用される。

概要

故障率曲線」も参照

ワイブル分布は、物体の体積と強度との関係を定量的に記述するための確率分布として1939年に提案された。一般には、鎖を引っ張る場合において最も弱い輪が破壊することにより鎖全体が破壊したとするモデル(最弱リンクモデル)として理解されている。

ワイブル分布は次の式で表される確率分布を持つ。

f ( t ) = m η ( t η ) m 1 exp { ( t η ) m } {\displaystyle f(t)={\frac {m}{\eta }}\left({\frac {t}{\eta }}\right)^{m-1}\exp \left\{-\left({\frac {t}{\eta }}\right)^{m}\right\}}

ここで、mワイブル係数(形状パラメータ)、η は尺度パラメータと呼ばれる。

平均値 μ は次式で表される。

μ = η Γ ( 1 + 1 m ) {\displaystyle \mu =\eta \Gamma \left(1+{\frac {1}{m}}\right)}

Γガンマ関数を表す。

ワイブル係数 m の値によって分布の性質が変化する。m = 1指数分布m = 2レイリー分布になる。

応用分野

物体の脆性破壊に対する強度を統計的に記述する場合などに広く利用されている。ワイブル係数 m は物体を構成する材料の種類によって決まる。一般に m が大きい材料は強度のばらつきが小さく、設計において安全性を確保することが容易になる。

一方、部品に対して応力、電圧、温度などの負荷が継続的に加えられる場合の故障現象に対しても応用できる。最弱リンクモデルの応力を時間に置き換えれば、部品において寿命が最も短い部分が故障することによって部品全体が故障したとするモデルとなる。1960年代以降、部品の劣化現象や寿命を統計的に記述するために広く利用されるようになった。

以下、時間tに対する故障率を記述する方法について説明する。

時間に対する故障率は次式で表される。

λ ( t ) = m η m t m 1 {\displaystyle \lambda (t)={\frac {m}{\eta ^{m}}}t^{m-1}}

故障現象はワイブル係数 m によって次の3種類に分類される。

  • m < 1 のとき、時間とともに故障率が小さくなる性質すなわち初期的な故障。
  • m = 1 のとき、時間に対して故障率が一定となる性質すなわち偶発的な故障。
  • m > 1 のとき、時間とともに故障率が大きくなる性質すなわち摩耗的な故障。

信頼度(故障しない確率)は次式で表される。

R ( t ) = exp { ( t η ) m } {\displaystyle R(t)=\exp \left\{-\left({\frac {t}{\eta }}\right)^{m}\right\}}

不信頼度(累積故障率に相当)は次式で表される。

F ( t ) = 1 R ( t ) = 1 exp { ( t η ) m } {\displaystyle F(t)=1-R(t)=1-\exp \left\{-\left({\frac {t}{\eta }}\right)^{m}\right\}}

ワイブルプロット

製品の信頼性試験を行い、実験結果をワイブル分布で近似しようとしたとする。例えば時間に対する故障率の実験結果をプロットし、それをワイブル分布に当てはめようとする。ワイブル分布は複雑な形状をしているため、両者の当てはまり具合を直感的に理解することが難しい。ワイブル・プロットは以下の通り、不信頼度の式を変形し、時間と不信頼度の関係を直線近似で可視化する方法である。ワイブル確率紙として応用されている。

ln { ln 1 1 F ( t ) } = m ln t m ln η {\displaystyle \ln \left\{\ln {\frac {1}{1-F(t)}}\right\}=m\ln t-m\ln \eta }

ここで、 Y = ln ( ln 1 1 F ( t ) ) {\displaystyle Y=\ln \left(\ln {\frac {1}{1-F(t)}}\right)} , X = ln t {\displaystyle X=\ln t} とすると次式のようになる。

Y = m X m ln η {\displaystyle Y=mX-m\ln \eta }

すなわち、 ln t {\displaystyle \ln t} に対して ln ( ln 1 1 F ( t ) ) {\displaystyle \ln \left(\ln {\frac {1}{1-F(t)}}\right)} をプロットすると直線になり、その傾きからワイブル係数 m を求めることができる。

関連項目

外部リンク

離散単変量で
有限台
離散単変量で
無限台
  • ベータ負二項(英語版)
  • ボレル(英語版)
  • コンウェイ–マクスウェル–ポワソン(英語版)
  • 離散位相型(英語版)
  • ドラポルト(英語版)
  • 拡張負二項(英語版)
  • ガウス–クズミン
  • 幾何
  • 対数(英語版)
  • 負の二項
  • 放物フラクタル(英語版)
  • ポワソン
  • スケラム(英語版)
  • ユール–サイモン(英語版)
  • ゼータ(英語版)
連続単変量で
有界区間に台を持つ
  • 逆正弦(英語版)
  • ARGUS(英語版)
  • バルディング–ニコルス(英語版)
  • ベイツ(英語版)
  • ベータ
  • beta rectangular(英語版)
  • アーウィン–ホール(英語版)
  • クマラスワミー(英語版)
  • ロジット-正規(英語版)
  • 非中心ベータ(英語版)
  • raised cosine(英語版)
  • reciprocal(英語版)
  • 三角
  • U-quadratic(英語版)
  • 一様
  • ウィグナー半円
連続単変量で
半無限区間に台を持つ
  • ベニーニ(英語版)
  • ベンクタンダー第一種(英語版)
  • ベンクタンダー第二種(英語版)
  • 第2種ベータ
  • Burr(英語版)
  • カイ二乗
  • カイ(英語版)
  • Dagum(英語版)
  • デービス(英語版)
  • 指数-対数(英語版)
  • アーラン
  • 指数
  • F
  • folded normal(英語版)
  • Flory–Schulz(英語版)
  • フレシェ
  • ガンマ
  • gamma/Gompertz(英語版)
  • 一般逆ガウス(英語版)
  • Gompertz(英語版)
  • half-logistic(英語版)
  • half-normal(英語版)
  • Hotelling's T-squared(英語版)
  • 超アーラン(英語版)
  • 超指数(英語版)
  • hypoexponential(英語版)
  • 逆カイ二乗(英語版)
    • scaled inverse chi-squared(英語版)
  • 逆ガウス
  • 逆ガンマ
  • コルモゴロフ
  • レヴィ
  • 対数コーシー
  • 対数ラプラス(英語版)
  • 対数ロジスティック(英語版)
  • 対数正規
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  • 行列指数(英語版)
  • マクスウェル–ボルツマン
  • マクスウェル–ユットナー(英語版)
  • ミッタク-レフラー(英語版)
  • 仲上(英語版)
  • 非心カイ二乗
  • パレート
  • 位相型(英語版)
  • poly-Weibull(英語版)
  • レイリー
  • relativistic Breit–Wigner(英語版)
  • ライス(英語版)
  • shifted Gompertz(英語版)
  • 切断正規
  • タイプ2ガンベル(英語版)
  • ワイブル
    • 離散ワイブル(英語版)
  • ウィルクスのラムダ(英語版)
連続単変量で
実数直線全体に台を持つ
連続単変量で
タイプの変わる台を持つ
  • 一般極値
  • 一般パレート(英語版)
  • マルチェンコ–パストゥール(英語版)
  • q-指数(英語版)
  • q-ガウス
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混連続-離散単変量
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ディリクレ多項(英語版)
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ディリクレ
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多変量正規
多変量安定(英語版)
多変量 t(英語版)
正規逆ガンマ(英語版)
正規ガンマ(英語版)
行列値
逆行列ガンマ(英語版)
逆ウィッシャート(英語版)
行列正規(英語版)
行列 t(英語版)
行列ガンマ(英語版)
正規逆ウィッシャート(英語版)
正規ウィッシャート(英語版)
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方向
【単変量 (円周) 方向
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